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DATE: CATEGORY:徒然
 
おはようごぜーます。

面白い記事を見つけたので転載します。
経済不況の中、日本経済がいかに安定しており、いかにチャンスか、以前の日記では上手く説明できなかったのですが、これならわかりやすいかなと。
時間がないので引用のみ。
コメントや注釈は帰ってからしようと思います。

では追記から。


   


1ドル70円台の日本経済:  三橋貴明 著
出典:1ドル70円台の日本経済:三橋貴明(作家)
2009年2月21日(土)10:00

◆超円高で経済破綻?

「79円50銭です! 79円50銭を付けました。史上最高値が、ついに更新されました!」
「……繰り返します。ロンドン市場で、円が1ドル79円50銭まで買い進められ、1995年に付けた円の最高値79円75銭を上回りました」
「95年以来、じつに14年ぶりに円相場が最高値を更新したのです!」
「昨年から予想されていたように、超円高時代の到来です!」

雨はいまも降りつづいている。

7月に入ったにもかかわらず、長梅雨は一向に終わる気配を見せない。

最近の新聞やテレビでは、契約を打ち切られた派遣社員の話題で持ち切りである。

明日はわが身だ。中堅クラスの商社に勤めて、はや30年になろうとする自分だ。
この年で解雇などされると、さすがに再就職もままならないだろう。

梅雨が重い。

湿気を帯びた空気が全身に纏わり付いてくる感触に、山本は2度、3度、何かを振り払う動作を見せた。


「ただいま……」

口元から漏れ出た声があまりにもうつろに響き、山本はわが事ながら思わず皮肉な笑みを浮かべたものである。

それほどの疲労は感じないのだが、声色はごまかせない。

玄関脇の傘立てに重さを増した傘を突っ込み、顔を上げると、リビングの扉から薄明かりが漏れ出ているのが見えた。

(……帰っていたのか)

山本は口元に歪んだ笑みを張り付かせたまま、リビングルームへと足を向けた。


「あ、父さん。お帰り!」

50インチを優に超える大画面液晶テレビから目を離さずに、息子の和仁が声だけで出迎えてくれた。

その口調は若者特有の快活さに満ちていて、山本の眉間に微妙に皺が寄った。

大学に入学したばかりの息子は、いつも陽気な態度を崩さない。

むろん陰鬱な顔ばかり見せられるよりはマシだが、日々の仕事で気が休まる暇がない身としては、いささか忌々しく感じるのも確かだ。

5年ほど前に妻に先立たれ、いまは息子と2人暮らしの父子家庭だ。

山本はソファに乱暴にビジネスバッグを放り出すと、何げなくテレビに目を向けた。

瞬間、山本は背筋が凍りつく思いを味わったのである。

画面の上部に「79円50銭!」と極太のテロップが浮かび上がり、中年の脂顔の男がヒステリックな口調で繰り返している。

「79円50銭です! 史上最高値が更新されました!」

この脂顔のアナウンサーの名前は、たしか古林といったか。

悲観的なニュースを嬉しそうに語るそのスタイルが、山本は個人的に大嫌いだった。

「超円高時代到来か……」

山本は搾り出すように呟き、続けようとした。

これで日本経済は お し ま い だ、と。


ところが山本の台詞は、妙に明るい口調の息子に遮られてしまったのである。


「良かったね、父さん」


「な……」

唖然とする父親に向き直り、和仁は目を輝かせながら続ける。

心の底から嬉しがっている表情である。

「通学にバイクを使っていると、やっぱりガソリン代がきついんだよねぇ。」
「これだけ円高になれば、ガソリンの値段もそうとう下がるはずだよね」


「あのな、和仁……」

山本は声音が荒々しさを帯びないように、注意深く語り掛けた。

未成年とはいえ、自分の息子がここまで世間知らずだと、さすがに腹立たしい。

「円高の意味を分かっているのか?」
「日本経済が、これまで以上に大変になるということだぞ。」
「下手をすると、経済破綻だ。」
「いや、この調子で円が上がっていけば、間違いなく破綻するな」


「どうして?」
「これまでの歴史上、通貨高で経済破綻した国は、1つもないよ。」
「その逆、つまり通貨暴落で経済破綻した国は山ほどあるらしいけど」

息子の淡々とした口ぶりに、山本はかなり面食らった。

いきなり「歴史上」などという返し方をされるとは予想していなかった。

山本はネクタイをわずかに緩め、疲れた素振りで椅子に腰を下ろした。


「歴史上の話はそうかもしれないが、なにしろ日本は世界最大の外需依存国だ。」
「このまま円高が続くと、輸出が不可能になってしまう。」
「外需に頼る日本経済は輸出ができなければ、破綻するに決まっているだろう」


「外需依存国?」

息子の目が面白そうな光を帯びた。

山本は何となく不穏な気配を覚えたものだ。


「何、それ? 日本が外需依存国って?」

山本は大きく溜め息をつく。

こんな基本からいちいち説明しなければならないとは、わが息子ながら呆れたものだ。

自分の会社の若手社員もそうだが、若い奴らはどうしてこう、常識というものを知らないのだろうか。


「外需依存国ということは、つまり日本経済が輸出に頼っているということだ。」
「GDP、国内総生産に占める輸出の割合が、とても大きいという意味だな。」
「だから円高になれば、日本は経済破綻に追い込まれるわけだ。」
「分かるか?」


「輸出の割合が大きい?」
「輸出依存度、つまり輸出対GDP比率が高いってこと?」

山本はギョッとし、思わず異星人でも見るような視線を息子に送った。

「輸出対GDP比率」などという、専門的用語が息子の口からすらすら出てくるとは、かなり違和感がある。

山本は何となく焦った素振りで、少し早口に言い返した。

「そうだ。輸出対GDP比率が高いということだ。」
「日本は外需依存国だからな」


「日本の輸出依存度って、せいぜい15%だけど、これって高いかな?」


「……高いだろう。15%もあるのだから」


「でも他の国と比較すると、日本の輸出依存度は、主要国のなかではアメリカの次に低いよ。」
「なにしろ製造業が衰退しちゃった、あのイギリスよりも低いんだから」

一瞬、山本は返す言葉を失った。

何と反論してやればいいのだろうか。
父親の戸惑いになどまるで気付かぬ様子で、和仁は滑らかな口調で続ける。

「ついでにいうと、主要国で輸出依存度が高いのはドイツや中国、それに韓国ね。」
「なにしろこれらの国の輸出依存度は4割近くにまで達しているから、日本の倍以上だよ。」
「日本が外需依存国というのであれば、ドイツや中国は何と呼べばいいんだろう。」
「超外需依存国でいいのかな?」


「……」

山本は少し考え込んだ。

具体的な数字を出されるのは予想外だったが、自分は筋金入りの商社マンだ。

日々、さまざまな客先で、円高に苦しむ輸出製造業のサポートを続けている。

彼ら輸出製造業の苦しみを、ダイレクトに肌で感じつづけているのは、息子ではなく自分だ。

「数字上はたしかにそうかもしれないが、実際にこの超円高で、日本の輸出企業はたいへん苦しい思いをしているんだ。」
「このまま円高が続くと、日本の輸出産業は全滅するとさえいわれている。」
「父さんは、毎日毎日お客さまとお会いして、直接お話を聞いているのだから、輸出企業の皆さんの厳しさはよく分かっている」


「父さん。実質実効為替レートって知っている?」

また知ったかぶりか。
山本は、一瞬、激高しかかった自分を必死に抑え込む。
まったく聞きかじりの半端な知識で、父親である自分に対抗できるとでも思っているのだろうか。


「当たり前だ。アメリカドルだけではなく、日本と関係がある国や地域の為替レートを貿易量で加重平均して算出した為替レートのことだ。」
「それがどうした?」


「いまの父さんがいった定義で算出されるのは、名目実効為替レートだよ。」
「名目実効為替レートは、関係国の物価水準の変動を加味していないから、輸出の厳しさを正しく測れない。」
「どれだけ名目実効為替レートが高くなっても、相手国の物価がそれ以上に高騰しちゃえば、輸出はかえって楽になるんだから。」
「日本の輸出企業が厳しくなるのは、物価変動を加味した実質実効為替レートが上昇したときね。」
「もちろんいまは名目値の円レートが高くなっているから、実質実効為替レートも上昇しているよ。」
「でもいまだに 1 3 0 ポ イ ン ト にも届いていないんだから、せいぜい2001年レベルでしかないんだよ。」
「なにしろ1995年に1ドル80円を切ったときは、実質実効為替レートが1 6 0 ポ イ ン ト を 超 え た から、あのときに比べれば、いまはまだ円安なんだよ。」
「それで本当に輸出産業が全滅とかいう話になるの?」
「日本の輸出企業って、そんなに弱いのかなぁ。」
「信じられないよ」


たしかにそうだ。
実質実効為替レートでいえば、いまはまだ2001年ごろの水準にすぎない。
仕事柄、山本はもちろん現在の実質実効為替レートの水準を知ってはいたが、日頃の業務のなかで「円高、円高」といわれるので、とくに何の疑問も抱かず、そのまま受け取っていた。

しかしあらためて考えてみれば、2001年レベルの為替水準で、日本の輸出産業が全滅などありうるはずがない。


「しかしだな……」

山本はもはや必死に頭を振り絞り、息子への反論の糸口を探したものだ。

「実際、マスコミや経済評論家は、日本の内需は絶望的だ。」
「だから日本は輸出で成長していくしかない、と毎日のように繰り返しているじゃないか。」
「内需が成長しないなら、やっぱり輸出で食っていくしかないわけだ。」
「実質実効為替レートの件はともかく、いずれにせよ円高は輸出企業にとっては望ましいことではない。」
「なにしろ日本の内需はまったくダメなわけだから、頼みの輸出を順調に成長させるためにも、円安のほうが良いに決まっている」


「マスコミや評論家って、それって『〇経新聞』のこと?」

息子は笑いをこらえるふうに、肩を震わせている。

何がそんなにおかしいのだ。
父親に対してこんな態度をとるなんて、最近の若者ときたら……。

いや、自分が和仁の年齢のころも似たようなものだった気もする。
どうだっただろうか? 
山本は不意に、自分の年齢を強烈に意識した。

「まあそのマスコミが何新聞でもいいけど、いまの話って、因果関係が逆だよ」


「因果関係?」


「そう。」
「だって、内需がダメだから輸出で成長していく、つまり円安のほうが望ましいというけど、内需の成長が抑え込まれているのは、そもそも円安だったからだよ。」
「円が安くなっているときは、日本人の購買力がどんどん削られていっているわけだよね。」
「輸入価格が上昇するわけだから。」
「日本人の購買力が小さくなれば、国内を主な市場としている中小企業だって、それはやっぱり経営的に厳しくなるでしょう。」
「外国への輸出で稼いでいる大企業はともかく、円安になれば中小企業の収益力が落ちて、内需の成長率が低下して当然だよ。」
「内需を成長させたいなら、方法は単純だと思うけど。」
「円高にすればいいんだ」


「円高にすればいいって……簡単にいうな。」
「そもそも日本の内需、とくに個人消費は規模が大きくないのだから、円高で個人の購買力を強くしても、高が知れているだろう」

息子は何か言いかけたが、すぐに口を閉じた。

ようやく言いくるめることができたわけだ。
山本が取り戻した父親の威厳に、ホッと息をついたところ、


「父さん、それは本気でいっているの?」
「日本の個人消費の規模が小さいって……」

再び、何となく嫌な予感が込み上げてきたため、山本は押し黙った。

父親の沈黙を受けて、和仁は寂しそうな視線を送ってきた。

その眼差しには明らかに哀れみの情が浮かんでおり、山本の不愉快度は急角度で上昇した。


「本気だとも。」
「経済新聞だけではない。テレビでも経済評論家がいつもいっているじゃないか。」
「日本の個人消費は絶望的だ。」
「だから、これから伸びることが明らかな新興経済諸国、たとえば中国などの市場に注力しなければならないんだってな」


「個人消費は日本のGDPの56%を占めるよ。」
「日本のGDPは、半分以上が個人消費なんだ。」
「それはもちろん、個人消費が7割近いアメリカには負けるけど」
「個人消費がGDPの3割程度しかない中国なんかとは、比較にならないほど大きいんだよ。」
「しかも中国の個人消費はGDPに占める割合が年々減りつづけているけど、日本のほうは逆に増えているよ。」
「昨年にしても、あれだけ不景気だ」
「不況だってマスコミが悲観論をばらまいたのに、日本の個人消費はそれなりに成長していたんだよ。」
「もちろん円が高くなって日本人の購買力が高まったのが原因だと思うけど」


「……」


「だいたい、父さん。マスコミや評論家が何かいうときに、数字を使って説明するのを聞いたことがないでしょう。」
「数字を出すと嘘がばれちゃうから、みんな『日本は外需依存国』とか『日本の内需は絶望的』みたいな、印象論だけを何度も繰り返してミスリードしているんだよ。」
「なにしろ、世界に外需がゼロの国はないから『日本は外需依存国』だってけっして嘘ではないし、円安のせいで日本の内需の成長率が輸出に負けていたのは確かだから、『日本の内需は絶望的』も嘘とは断言できないからね。」
「かなり、ぎりぎりだと思うけど」


「……」


「ついでにいうと、超が付く外需依存国である中国の純輸出(輸出-輸入)、つまり外需ね。」
「外需がGDPに占める割合は10%近いんだよ。」
「純輸出がGDPの1割近いって、ここまで外需に頼りきっている国はほかにはないんじゃないかな。」

「逆に日本の外需、つまり純輸出がGDPに占める割合は、2%未満だよ。」
「つまり日本のGDPは、じつは98%以上が内需なんだよ」


「しかし、日本は少子化で人口が減っているんだ。」
「人口が減っているのだから、内需がこれから伸びるわけがないだろう」


「人口が減っているって……」

和仁は呆れたふうに、1つ大きく溜め息をついた。

「たとえば、昨年は日本の人口が5万人ぐらい減ったみたいだけど」
「それって日本の人口の0.04%にも満たない人数だよ。」
「誤差レベルにも達しない人口が減って、内需がそんなに影響を受けるはずがないでしょう。」

「日本のGDPの半分以上が個人消費だから、日本に住む人が1年間に2%だけ消費を増やせば、それだけでGDPが1%増えるんだよ。」
「どう考えても、人口よりも個人の消費の影響のほうが大きいでしょう」


「凄いな……」

さすがに敗北を認めざるをえず、山本は思わず口に出して呟いた。

「いったい、どこでそれだけの知識を身に付けたんだ。」
「学校か。」
「よくもまあ、それだけ具体的な数字がポンポン出てくるもんだ」

父親の賞賛の言葉に、和仁はやや照れくさそうな笑顔を見せた。


「大学で勉強したのもあるけど、やっぱりネットかな」


「ネット? まさか、インターネットのことか?」

思わず顔をしかめた山本に、またもや息子は寂しげな視線を送る。
だから、その哀れみに満ちた顔はやめてくれ、と、山本は心の奥底で叫んだ。


「父さん。まさか、いまどき『インターネットは便所の落書き』なんて時代錯誤なこと言い出したりしないよね。」
「ネットの世界では、不特定多数の見知らぬ人を相手にするわけだから、きちんとした情報ソースに基づいて話をしないと、まったく相手にされないよ。」
「だいたい父さんだって、会社でインターネットは活用しているでしょう」


「……」


「ちなみにGDPや輸出依存度なんかのデータは、日本政府のホームページに掲載されているよ。」
「たしかGDPが内閣府で、日本の輸出入が財務省。」
「それに実効為替レートが日本銀行のホームページだったかな。」
「データを載せてくれるのはいいけど統計によってバラバラの場所に置かれているのは何とかしてほしいよね」


(政府のホームページからデータをもってきているのか!)
山本はかなり驚愕し、思わず言葉に詰まった。
何というか、時代も変わったものである。
これまで自分は、統計情報を調査するときに政府の一次ソースをきちんと確認したことがあっただろうか。
ちょっと記憶にない。


「しかし日本が外需依存国ではないことも、円高が内需拡大に有効なことも分かったが、それならば政府は内需拡大に的を絞った景気対策を打てばいいんじゃないのか?」
「これほどまでに簡単な話なのに、なぜやらないんだ?」


「やっているじゃん。昨年の12月に40兆円規模の景気対策を打つって発表して」
「きちんと予算を通したから、すでにいろいろな対策が始まっているはずだよ。」
「マスコミがあまり報道しないので、状況がよく分からないけど」


「40兆円!」


山本は息子の話の内容よりも、金額のほうに衝撃を受けた。

「財政破綻寸前の日本が、40兆円もの景気対策を打つのか!」
「そんなことしたら、瞬く間に財政が崩壊するぞ!」


「あははははははっ!」


いきなり息子が腹を抱えて笑いだしたので、山本は危うく反射的に怒鳴り散らすところだった。
何がそれほどおかしいのか、さっぱり分からない。
というか、父親の威厳はどこに消え失せてしまったのだろうか。
自分が何か、とても大切なものを失った気分だ。


「ざ、財政破綻って、日本政府が?」
「よ、よくもまあ、それだけ滅茶苦茶な話を信じられるね。あははははっ」


「いったい何がそんなにおかしいんだ」


「だ、だって、父さん、マスコミに毒され過ぎだってば……。」
「ああ、面白かった……はあ……」


ようやく息を継ぎ、息子は涙目の笑顔を見せたものだ。


「あのね、父さん。日本が財政破綻するとか、あれ、嘘だから」


「嘘……?」


「そりゃ、嘘でしょう。」
「日本政府の債務はたしかに巨額だけど、95%以上が国内向けの国債、分かりやすくいうと日本国内の民間からの借り入れなんだよ。」
「つまり円建ての債務ということになるよね。」
「円という通貨を発行できる政府が、円建て債務のせいで財政破綻するわけがないでしょう」


「しかし、夕張市は財政破綻したぞ。」
「ほかにも危ないといわれている自治体はいっぱいある」


「当たり前だよ。」
「夕張市は紙幣発行権があるわけじゃないんだから。夕張市が日本円を刷ったら、普通に犯罪でしょう」


いわれてみると、たしかにそうだ。
夕張市と日本政府を一緒にすることには無理がある。


「財務省が掲載している日本政府のバランスシートを見ると一発で分かるけど」
「日本政府の債務、つまり負債は840兆円もあるけど、同時に資産もでかいんだよ。」
「なにしろ政府の金融資産だけで550兆円近くもあるんだから。」
「これだけ巨額の資産をもっている政府は、世界中にどこにもないよ。」
「債務額から金融資産を差し引いた純債務額で見れば、日本の政府の債務はGDPよりも少なくなり、普通の先進国並みになるよ」


山本は言葉を失った。
そういえば、借金の額にばかり目が行って、政府は資産ももっているということに考えが及んだことは1度もなかった。

「それにそもそも日本政府がどうしてここまで債務を膨らませることができるかといえば、貸してくれる人がいるからだよね。」
「当たり前だけど貸し手がいなければ借り手は借りることができない」


それはそうだ。山本は心中で同意した。


「日本政府の債務のほとんどは、さっきいったとおり日本の民間から借りているんだよ。」
「ということは、政府の債務はそのまま日本の民間の『債権』ということになる」


「マスコミは『国民1人当たりの借金』といって危機感を煽っているじゃないか」


「あれもひどいミスリード」
「というかインチキ・レトリックだよね。」
「正しい言い方に改めるならば、『国民1人当たりの政府に対する債権』になるよ。」
「だって、借りているのは政府であって、国民じゃないからね。」
「国民はどちらかといえば、貸しているほうでしょう」


「……」


「だいたい国債を買っている人たちは、資産運用として国債を保有しているわけだから、償還するといわれても逆に困ると思うよ。」
「国債が償還されても、みんな結局また国債を買う羽目になるに決まってる。」
「日本国債以上の安全資産は、この世に存在しないから。」
「だから、日本政府は国債の償還期日が来たら、同額の国債を発行して永遠にロールオーバー(借り換え)していけばいいだけ。」
「日本国内に国債の買い手がいるかぎり、日本政府の債務規模は問題になるわけがない。」
「しかも日本の家計の金融資産が1400兆円を超えている状況だから、日本政府が国債の買い手に困るなんて、ちょっと考えられないと思うよ」


「うーむ……」

山本は思わず唸り声を上げた。

国債を買っているのは誰だ? 
こんな基本的な疑問を、これまで考えたこともなかったのは、なぜだろうか。


「それにさっきもいったけれど、日本政府は通貨発行権をもっているんだよ。」
「いざとなれば、日本政府は日銀に日本円を発行させて、国債を買い取らせることも可能なんだ。」
「だから日本政府が財政破綻など、現実にはありえないよ。」
「アメリカがいま、FRBにドルを増刷させて米国債を買い取らせているけど、あれと同じ事をすればいいだけだから」


何というべきか、
山本は自分のこれまでの常識が根底から覆される感覚を覚え、呆然とした思いで言葉を搾り出した。


「それでは、政府の債務が800兆円を超えていようが、40兆円の景気対策を打とうが、大した問題ではないのか」

「それはそうでしょう。」
「景気対策が順調に行なわれて、名目成長率が上がれば、政府債務のGDP比は勝手に小さくなっていくもの。」
「それよりも、とくに財政危機でも何でもないのに、景気対策を打たずに内需拡大の機会を逃すほうが危ないと思うよ。」
「さっきも父さんがいったとおり、円高で輸出企業が厳しくなっているのは、紛れもない事実なんだから」


息子が一瞬、皮肉とも受け取れる笑みをこぼした気がするが、気のせいだろうか。


「まあ、輸出企業が厳しいのは、円高よりも世界的な需要の縮小のほうが原因としては大きいと思うけど、だからこそ、世界中の政府が財政支出をして景気を下支えしようとしている。」
「そんなときに、日本だけが何もしないわけにはいかないよ。」
「なにしろ円高という日本の内需に対する絶好の追い風が吹いているんだから。」
「だいたいサブプライム危機やリーマン・ショックで、主立った国はみんな借金頼みの不動産バブルや株式バブルが崩壊して、内需がボロボロになってるんだ。」
「そんななかで、幸運なことに日本の内需はそれほど痛めつけられていないうえ、もともと規模が世界で2番目に大きいんだよ。」
「内需を拡大させて、輸出よりもむしろ輸入を拡大して、世界経済復活のために貢献する。」
「これこそが世界経済に対する日本の義務であり、いま、日本がやるべきことだと思うよ」


山本はもはや心の底から感嘆し、降参の意を込めて両手を軽く上げた。


「おまえの年齢で、経済についてそこまでしっかりとした考えをもっているとは。正直、父さんは感動した」


完膚なきまでの敗北だったが、なぜか山本はすがすがしい気分を味わっていた。
息子は恥ずかしそうにいったん顔を伏せ、何も言わずに晴れやかな笑顔を見せた。

翌朝のこと。

いつものようにテレビのスイッチを入れた山本の目に、いきなり古林の脂顔が飛び込んできた。


「また、こいつか……」

山本は思わず声に出して悪態をついてしまった。

古林はまるで苦行僧のように顔を歪め、嫌そうな口ぶりでニュースを読み上げている。

昨日のヒステリックな態度とは、まるで別人のようだ。

「……繰り返します。内閣府が本日発表した前四半期における日本のGDP、国内総生産は、輸出の大幅な落ち込みを個人消費の増加がカバーし、若干のプラス成長に終わりました。」
「全般的に輸入価格が下落したことや、ガソリンが1リットル100円を切ったことなどが、消費を下支えした模様です……」

どう考えてもよいニュースだと思うのだが、古林の口調はいかにも悔しそうで、山本は思わず声に出して笑ってしまった。

リビングの大きな窓に目をやると、眩いばかりの陽光が差し込んできている。雨は上がったらしい。

そういえば、もうすぐ夏がやって来る。



 
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コメント

 こんばんわ~、ご無沙汰です。
毎度毎度、楢さんの記事を見て思うのは、報道されているものとのギャップ。ニュースなどの内容がウソではないんだろうけど、あの偏って内容にはどうしてもイライラとしてしまう。
 最近はTVをつけると「麻生おろし」なんて単語が良く目に付くけど、実際のところ「麻生さんて悪い事してなくね?」と思う。
そりゃ、周りの人たちが足を引っ張ってる感はあるけど、あれは麻生さんの責任じゃないと思うんだ。
「選んだ人間が悪い」っても言われるかもしれないけど、「だったらお前らは確実に失敗をしない人間を選べるのか?」と逆に聞きたくなる。
そもそも、麻生さんは発言で色々叩かれてるけど、別に間違った事は言ってない。むしろ「ウソや建前」の政治家より、裏表が少なくて俺は良いと思うのだけど・・・おかしいのかな?

 なんか長文になってしまいました。すいません^^;

負けるものかと長文でコメント返したのに…
しにたい('A`)

まあ、しずくちゃんはおかしくないってことだ。うん。

('A`)

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